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2020.10.27

#02うちのアマダサン「ねえ……プレゼンなのに何故ジャージ!?」

enpitsu

浅井 ユキコ

放送作家、コピーライター、編集・ライター

二十歳の時、放送作家事務所に所属し日本テレビ「高校生クイズ」などを担当。その後、活動領域を活字媒体に広げるべく広告代理店(株)エス・ピー・サービスに転職しコピーライターを学ぶ。さらに住宅雑誌では編集長を務めたことで、メディア(放送作家)、広告(コピーライター)、雑誌(編集・ライター)という3ジャンルに携わることができる異色の物書き。現在では自身が起業したライター集団(株)LOCOMO&COMOの代表と、社会貢献事業を行う一般(社)TERACO舎の理事を務めるなど、精力的に活動している。個人としては先祖代々ジャイアンツファンを語り、甲子園に行くために受験校を選択するなど大の高校野球好き。また、病院の病棟で看護補佐を行うなど何足ものわらじを履く意外性もある。

今日はそうです、「出オチ」のエピソードをお話させていただきます。

 

ワタクシは、コピーライターとして仕事をする時は、
自分が立ち上げたライター会社に所属する「フリーランス」という立ち位置なので、
広告代理店と組んで、クライアント企業様とお仕事をすることになります。

早い話、自分の会社であっても、コピーライターで仕事をするときは、
親会社である広告代理店からお金がおりてくる以上「クライアント様」になるのです。

ワタクシにとってのクライアント様
である企業の社長・アマダサンから、
ある時プレゼンの依頼がきました。

「ユキ、デカイ仕事。プレゼン手伝って」


最初の情報量は、いつもまあまあ、これぐらいです。
でも大丈夫です。

付き合いが長いのでことわれないということだけはわかっていますので。

 

追って知らされるところによると、どうもコンペティションのようです。
3社ぐらいでプレゼンテーションして、
企画内容が良く、金額も見合った1社に仕事を発注したいという
クライアント様のご意向だということです。

よくあることです。

ワタクシも、フリーランスのコピーライターとして活動していますので、
大手広告代理店から少人数の制作会社まで、数多くの企業とタッグを組み、
さまざまなプレゼンテーションの場に立ち会わせていただきました。

だから、わかるのです。

いかにも広告代理店らしい、
かっこいいプレゼンが
「どういうものであるか」ということを


当然のことながら、「守秘義務」、がありますので、
プレゼンの内容や演出方法など、垣根を越えて情報を漏らすといった
モラル違反をすることはありません。

でも、ドラマでもそうしたシーンが描かれていますので、
皆様もその場に居合わせなくても、
プレゼンテーションがどんな感じで行われているかぐらい、想像がつくことと思います。

プレゼンテーションは、
審査するクライアント様が2〜3名という少人数の場合もあれば、
20人、30人と比較的大人数の場合もありますので、
その進行の仕方や演出方法はさまざまかと思います。

しかし、ある一定のセレモニーであるため、
最初の決まり挨拶ぐらいはどこも皆様お持ちであり、
その時の衣装もスーツでビシッと決めてくるのは当然のことです。

そして、こう言うのです。

【正しい例】
「この度は私共にプレゼンテーションの機会を頂きまして、
誠にありがとうございました。
それではこれより私共(会社名)の
プレゼンテーションを始めさせていただきます。
早速ですが、コピーライターの浅井より、
企画書の内容を説明させていただきます」


だいたい、このようなセリフの司会進行を広告代理店の営業担当の方がしてくださり、
紹介されたワタクシは、自分の名前を名乗って企画書の説明に入ります。

アマダサンはちがいます。


もちろんです。

いつもこんな感じです。

【まちがった例】
 「じゃっ、はじめまーす。
ユキ説明して」


………… 。

馬鹿なの? 

ねえ、

馬鹿なの?

落ちそうですよ、このコンペ。

そして先の
「ユキ、デカイ仕事。プレゼン手伝って」
につながるのですが、

この日のプレゼンのファッションが相当やばいものでした。

 

「今日は大事なプレゼンだー。緊張するなー」
と思いながら、朝イチで企業様のビルに到着すると、デザイナーの松山もおりました。

この日のためにワタクシたちは、多くの時間を費やして頭を悩ませ、作業し、準備してきました。
他の仕事とも並行して進めなければいけないため、徹夜同然の日もありました。

「絶対に負けられない戦いが、そこにはある」


はい、ワタクシたちにだってあります。
今日がその日です。
勝ちたいです、今日のこのプレゼン。

そこへアマダサンがやってきました。

 

(おわったー)

 

と、思いました。松山も心の中で思ったと思います。
その日のアマダサンの服装……

黒いプーマのジャージだったんです!!!!!
しかも、左胸に直径10センチ程もある
パッションピンクのプーマのマーク付


………… 。

馬鹿なの? 

ねえ、

馬鹿なの?

落ちるでしょ、このコンペ。

見たことないですよ、ジャージでプレゼンする広告代理店マン。
(居ねえよ、そんなやつ居ねえんだよっアマダッッッッッ!!)

ぶっ殺しそうになる気持ちをなんとかぶっ殺して、
違う意味で緊張しながら会議室に入りました。

(どうか、クライアント様が『ナメてんのかテメエ!!』と
怒り出すことだけは避けられますように。アーメン)

えぇ、もう無理です。勝てる気がしません。

だって、

黒いプーマのジャージに、
左胸に直径10センチ程もある
パッションピンクのプーマのマーク付

「じゃっ、はじめまーす。
ユキ説明して」


勝てる見込みがほぼ0%に近いことを悟ったワタクシは、
チラリとデザイナーの松山の横顔を見てみました。

血の気が引いた白い顔で、机の下の床をじっと見つめていました。

(このプレゼン終わったらぶん殴らせろ!!
 このプレゼン落ちたら社長の職を辞してくれ!!)

本気でそう思いました。

 

しかしそのプレゼンでアマダサン、
手前味噌で大変恐縮ですが、それはまあーーー「うまいな」と、
聞き惚れるようなトークを展開するのですね。

「THE アマダ劇場」ですよ

 

まあーーーこちら制作サイドから言わせれば、
「手柄をぜんぶ持って行かれた」という気持ちにならないでもないですが、
結局、そのプレゼンの結果は、

「こないだのコンペ、勝てたよんー♪」


と、アマダサンから伝えられました。

終始こんな感じなのに、アマダサンは本当に運のいい人です。
人を惹きつける話術もあると思います。
でも独特すぎるので真似をすることも学習することもできませんが。

常人には理解の出来ない七不思議的なものを、我が社は抱えております。

それにしても、ジャージでプレゼンに来た人間がいるにも関わらず、
そこを差し引いて、
「モノ」と「語り」で審査してくださったクライアント様には
本当に感謝しかありませんし、神としか思えません。

時々、そのクライアント様にお会いするのですが、
ワタクシは心の中でいつも(ほんと、スミマセン)と口癖のように思っています。

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