BLOG ブログ

2021.4.14

#10うちのアマダサン「勉強します」と言ったアマダサンが勉強したもの

enpitsu

浅井 ユキコ

放送作家、コピーライター、編集・ライター

二十歳の時、放送作家事務所に所属し日本テレビ「高校生クイズ」などを担当。その後、活動領域を活字媒体に広げるべく広告代理店(株)エス・ピー・サービスに転職しコピーライターを学ぶ。さらに住宅雑誌では編集長を務めたことで、メディア(放送作家)、広告(コピーライター)、雑誌(編集・ライター)という3ジャンルに携わることができる異色の物書き。現在では自身が起業したライター集団(株)LOCOMO&COMOの代表と、社会貢献事業を行う一般(社)TERACO舎の理事を務めるなど、精力的に活動している。個人としては先祖代々ジャイアンツファンを語り、甲子園に行くために受験校を選択するなど大の高校野球好き。また、病院の病棟で看護補佐を行うなど何足ものわらじを履く意外性もある。

皆様、大変ご沙汰してしまい申し訳ありません。

言い訳ですが、
お陰様でテレビ番組の仕事をしておりまして、
放送作家の身でありながら高知県へロケハンで同行させていただくなど、
少し忙しくしておりました。

 

さてさて。
そんなこんなで我が社のアマダサンの記事をアップさせていただきます。

 

作家事務所で、放送作家の仕事だけをしていた頃は
まったく使ったことのない

「勉強します」


という言葉。

広告代理店業という仕事に就いて、はじめて聞いたのですが、
この言葉、ある種ビジネス用語なんでしょうね。

お金をご請求させて頂く企業様の前で使うフレーズで、
ご提示した見積もり額が高い場面において「勉強します」と言って
お値引きした金額を改めてご提示する、というもの。

 

ちょっと例題を出してやってみましょう。

<最初のご提示シーン>

「お見積りをお持ちしました」

「思ったより高いですねぇ。ちょっと勉強できませんか?」

<再提示のシーン>

「前回の打合せから、勉強して参りました。今回のお見積りでいかがでしょう?」

「勉強いただきありがとうございます。それではこの金額でお願いします」

 

つまり「高いから安くしてくれない?」という要求を、
下世話な言い回しにならないようにと編み出された言葉のようです。

 

このやりとりを踏まえ、アマダサンのエピソードに入ります。

アマダサンがテレビ制作の仕事を辞め、
この会社に入り営業マンとしてまだヨチヨチ歩きだった頃のこと。

あるデベロッパー様の新築分譲マンションの販売に際し、
我が社が、折込チラシやパンフレットなどの
広告を担当させていただくことになりました。

制作に入る前にお見積をお出しするのですが、
前回のお打合せで提示したお見積の金額が若干合わなかったようで、
先の例題のように

「ちょっとだけ勉強してもらえませんか?」


と言われたのでした。

怖いと思いませんか?
アマダサンですよ!? 
さあ、これに対してどうお答えしたのでしょうか。

「前回の打合せで、
 勉強してこいと言われたので」

「わたくし」

「勉強して参りました!」


アマダサン、クライアントの担当者様数名を前に、
相変わらず自信満々のデカイ声です。

クライアント様は、
どれだけ勉強(いくら値引き)してきてくれたのかと、
期待で楽しみにしているといった様子で笑顔を浮かべています。

「こちらが新しい見積もりです!」


まあまあのドヤ顔で、クライアント様数名にお見積をお配りしています。

新築分譲マンションの制作依頼では、
チラシやパンフレットの他に、
ホームページ制作や週末に開催するモデルルームでのイベント企画、
さらに独特なところでいえば、
外観やエントランスの仕上がりを描く「パース」、
当時では図面集などもありました。

よって、見積もりの項目も細部に亘り記載していくため、
数枚に及ぶことがありました。

「どこが変わっているかというと!」

「まず1ページ目。
 何も変わっていません」


まあまあまあ。
外部に発注しているものもあり、
値引けない項目があるのは仕方のないことです。

「じゃあ2ページ目」

「実はこれも変わってません」


クライアント様、ここでちょっと吹き出しそうになります。

「はい、3ページ目」

「ここも何も変わってません」


クライアント様、さすがに焦れた様子になり、
ペンを持つ手をおでこにあて「考える人」のような難しい表情になりました。

「どこが変わっているかと言うと」

「最後のページなんです」


そのページしか残っていません。
全員(そりゃそうだろう!)と心の中で思ったに違いありません。

でも、ここのページでガッツリ値引きしてきたため、
「こんなに勉強して貰っていいんですか〜!?(喜)」という、
クライアント様からのお褒めの言葉を頂戴したくて、
敢えてそのようなショーアップをしたに違いありません。

「よーく見てください」


テレビ番組の演出なら、
ここで心臓の「ドックン、ドックン」という
効果音でも入りそうなシーンです。

「実は」


実は──!?

「値段が高くなっているんです!」


え?

一同衝撃のあまり、
思わず声に出して
「えぇ”〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!」
と言ってしまいました


しかしアマダサンは怯みません。

何事もなかったような清々しい顔をして、
こう説明をつけ加えています。

「値段は高くなっていますが、
 全部作る必要はないんですよ」


……………………………………。

そりゃそうです。

当たり前です。

皆様、先ほどの衝撃が強すぎて力が出ない様子です。

しかし、抜けてしまった魂を呼び戻し、
意識が戻ってきたクライアント様が、
力を振り絞ってこう質問しました。

「太郎さん、この項目ですけど、
 パースじゃなく
 イラストに変更したとしても
 値段は高いままですか?」


クライアント様は、アマダサンよりお年が下で、
しかも時々飲みに行ったりして懇意にしていただいている方です。

それに対しアマダサンは

「いえ、パースじゃないから、
 値段は下がりますし、
 作業も意外と簡単です」


とお返事。それに対しクライアント様が、

「あ、簡単なのか……」


と、ぼそっと相づちを打つと、

「お前が簡単とかゆーな!」


と、すかさず余計なツッコミ。いらないのに。

「なぜ前回より高くなっているかというと……」


アマダサンのプレゼンがはじまりました。

それによると、改めて見積もりを作っていたところ、
従来のやり方ではなく、トレンドになりつつある最新の手法を使うと
これまでよりもっとカッコよく演出でき、
そうすることで他社や競合物件との差別化ができる、ということでした。

つまりアマダサンは、“それ”を勉強してきたのでした。

「なら……、これでいきましょうか」


結局、“勉強した甲斐あり!?”、

前回の見積もりより高い金額のほうでクライアント様は納得してくださいました。

クライアント様が
「勉強」させられてしまった


ようなものです。

そんなことって、、、あり得ないはずなのに。

 

やっぱりすごいです、アマダサン。

 

注) 現在のアマダサンは、「勉強する」の意味をしっかり把握しております。
   どうぞご安心してお仕事をご依頼くださいませ。

関連ブログ

CONTACT US

writer ライター

Copyright(C) iPPON COMPANY GROUP