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2020.11.9

#04うちのアマダサン「噛み合わないのに大絶賛」のマイクパフォーマンス

enpitsu

浅井 ユキコ

放送作家、コピーライター、編集・ライター

二十歳の時、放送作家事務所に所属し日本テレビ「高校生クイズ」などを担当。その後、活動領域を活字媒体に広げるべく広告代理店(株)エス・ピー・サービスに転職しコピーライターを学ぶ。さらに住宅雑誌では編集長を務めたことで、メディア(放送作家)、広告(コピーライター)、雑誌(編集・ライター)という3ジャンルに携わることができる異色の物書き。現在では自身が起業したライター集団(株)LOCOMO&COMOの代表と、社会貢献事業を行う一般(社)TERACO舎の理事を務めるなど、精力的に活動している。個人としては先祖代々ジャイアンツファンを語り、甲子園に行くために受験校を選択するなど大の高校野球好き。また、病院の病棟で看護補佐を行うなど何足ものわらじを履く意外性もある。

アマダサン、お笑い芸人をやっていたことがあるんです。
テレビにも出ましたね。

でもアマダサンは、舞台上より
普段のトークの方がよほど面白いと思います。
自然に出る言動がいっちゃってるんでしょうね。

さて、お陰様で弊社は、
とある大きなマラソン大会のお仕事をさせていただいたことがあります。
都内の道路のあちこちを閉鎖して行う大会ですので、
ボランティアの方にも手伝ってもらわなければ運営が成り立ちません。

そこで弊社は
とても重要なミッションを
仰せつかっていました


一般ボランティアの方全員が、同じ思いで、同じ熱さで、
「マラソン大会を成功させるんだ」という強い気持ちになってもらうことが
大会を安全に成功させる為には何より重要になります。

裏を返せば、そういう気持ちに、させねば、ならないのです。

「感動の涙を誘って欲しい」


ボランティアの皆様のモチベーションを上げる映像制作が
ご依頼でした。

さらに、ボランティアをするにあたり、
当日の活動内容をよく理解してもらえるよう、
マニュアルの冊子制作も頂戴しました。

しかしこれには、経験則がなにより大事だと踏んだアマダサン。
早速社員を巻き込み、
実際の現場でボランティア体感をするところからはじめました。

実はこれを機に、弊社では社員の多くがスポーツボランティアとして、
毎年さまざまなスポーツイベントに参加しています。

さて、先の「泣かせる映像制作」のこと。

東京ビッグサイトに
200人の一般ボランティア


の皆様がお集まりです。
ものすごいプレッシャーではありましたが、
「ボランティア事前説明会」で映像を見ながら、
心の琴線に触れたのでしょう、ひとり、またひとり、と
すすり泣く声が聞こえてきた時には、安堵もあり、
ワタクシ自身も、もらい泣きしたものです。

手前味噌ではありますが、
ミッションにはある程度、応えられたものと自負しています。

というわけで、会場内が感動の涙でややウエットに、また、
「やるぞ!」というやる気がみなぎる状態となり、
素晴らしい熱意が渦巻いています。

そんな熱気溢れる中、壇上に
アマダサンが
マイクを手に現れました


会場の皆様に、活動内容についてご説明する為です。

………………。

ワタクシにはわかります、
あの「一発笑いとったろう」という上気したニタリ顔。

今は、笑いは、いらないんです。
みんな熱い想いで「やるぞ!」となっているんですから。
しかしアマダサンも、別の温度で「やってやるぞ!」と思っています。

(事故のニオイしかしない)


何か良からぬことが起こりそう。
嫌な予感がします。

「え〜〜、あ、あ、……」


余計なマイクチェックをしています。

「びなば〜ん!! ごんにちばーっ!」

(みなさん、こんにちは、と言っています)

声が大き過ぎて、マイクの音が割れています。
怖いです。
「まもなく必ず来る」大地震に備えているような心境です。

「あれ!? 元気ないですねー」
「ごんにちばーっ!」


勝手にコール&レスポンスをやっています。
もう嫌です。帰りたいです。
人気アーティストのボーカルのようなことをやっています。

「僕の名前は天田たろーです。
 1969年12月23日生まれです。
 それでは皆さんに聞きます。
 僕より一日でも早くお生まれになった方、
 手を挙げてください!」


なにが始まるのでしょう……。
不安です。

「あざーす、先輩っ!!
 では今の皆様方は、僕のことを
 『たろー』と、
 どうぞ呼び捨てにしてください」

「それ以外の人!
 その人たちは僕より年下なんだから、
 『たろー様』と呼ぶように」


脱走したいです。

しかし実際、ボランティア活動の現場でアマダサンは、
年下の皆様から本当に「たろーサマー」と呼びかけられていました。
そんなことってあるのでしょうか。人気者でした。

そのようなテンションで、活動に対する事前の説明をし始めました。
さっきのびっくりする登場より、少しはいい感じで説明をしてくれています。
そうなんです、やれば上手いんです。
このまま真面目な感じで説明に徹してくれればそれでいいんです。
今日は笑いは大丈夫。
変な色気を出さずにそのままいきなさいね、と思った矢先、
アマダサンの暴走ははじまりました。

以下は、壇上でのアマダサンの説明です。

「あのですね、
 マラソン大会が行われる時期は寒いです。
 防寒対策にもなりますから、皆さん、
 軍手を持って来てくださいね」

「軍手ってわかりますか?
 軍の手ですよ!」


この「説明が説明不足」って凄くないですか?
軍の手って、絶対に意味が変わってきています。

「もしプライドが高くて
 『軍手なんかできないわよ!』
 という方がいらっしゃったら、
 高い手袋してきたらいいじゃないですか」

「ちなみに僕は、
 高い手袋していきます!」


話の趣旨が変わってきました。

皆様、壇上のアマダサンに釘付けでした。
しかし、魂は異空間を彷徨っているようでした。

また、このような説明もありました。

「今回は寄付をして参加する、
 チャリティーランナーという方がいます」

「ま、要は金持ちランナーです」

「その金持ちランナーさんには、
 珈琲なんかが飲める
 VIPな控室を用意してるんですね」

「皆さんは、そのチャリティーランナーに
 『控室はどこですか?』なんて聞かれることが
 あるかもしれません。
 その時は『一番奥の部屋になります』
 と教えてあげてください」

「しかしですねぇ〜、
 金持ちランナーですからねぇ〜。
 ちょっと、なんて言うんですか?
 荒っぽい人もいるかもしれませんよね」

(おそらく高圧的なとか、傲慢なとか、そういうことが言いたいのだと思います)

「それで『そんなに遠いのかよ!』と
 文句を言われてしまうことが
 あるかもしれません。

 そんな時は、こう答えてください」


説明を受けている参加者の皆様は、とても真面目な方々です。
大事な接客マニュアルでも伝授してもらえるのではないかと、
メモ帳にペンを置いた状態で、アマダサンの次の言葉を待っています。

「もし、金持ちランナーに
 『そんなに遠いのかよ!』と言われたら!
 『私が決めたことではございません!』
 と答えてください!」


大したことなかった……。 
皆様脱力して、誰もメモをしていなかったように思います。

さらに質疑応答でのこと。
「質問はありますか?」という呼びかけに手を挙げたご婦人から
こんな質問がありました。

「ランナーの手荷物を返却する際、
 ゴールしてきた方が集中してしまい、
 バタバタ混乱してしまうものなのでしょうか」


いい質問ですね。
経験したことのない現場を想像して、事前にイメージしておきたかったのでしょう。
それに対し、アマダサンはなんと答えて差し上げるのでしょうか。

「そうですねぇ、僕の経験上、
 バタバタしたことはありませんね。
 でも、
 もしバタバタするようなことがあったら、

 その時はごめんなさい!」


凄い質疑応答です。
あぁーーもう二度とこんな大きな仕事には恵まれることはないでしょう。

そう思っていたのは私だけでしたか?
会場からはどっと笑いが起こり、なぜだか拍手が聞こえます。

(誰に対する、何の賞賛?)

ええ、意味がわかりません。

しかし、これが

アマダマジック


なんだと思います。
同じことをワタクシがやったら? 
間違いなく非難されますし、なんならクビです。

何故なのでしょう。

最終的に、
アマダサンに質問したい方が集中するほど質疑応答が盛り上がるという、
異常な事態で会は終わりました。

徹夜して感動的なナレーションを書いたワタクシの苦労とは裏腹に、
一瞬にしてかっさらっていくのがアマダサンです。

まさにディスリスペクトです。

「おーいユキー、今日の説明、
 ちゃんとできてたかなぁ?」


できてねえよ。

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